口を大きくあけて口の中を見ると、まず目に入るのが顎(あご)の上の方から垂れ下がっている口蓋垂(こうがいすい)で、その両脇の舌の付け根あたりに丸く腫れているような部分があります。
人によっては、ほとんど見えなかったり、親指大だったりしますが、これが扁桃です。
扁桃の役割は、体内へ侵入しようとするウイルスや細菌などの病原体から体を防御することです。
ただし、これは免疫力が少ない子どもの話です。扁桃は、 おおむね中学生くらいになると、ほぼ成人と同様の大きさになります。そして、おおむねこの頃になると、身体全体の免疫機能の発達も完了します。そこで、それまでは扁桃だけに頼っていた人間の免疫機能は体内のいたるところにあるリンパ節に依存していくことになります。つまり、扁桃が大事な役割を果たしているのは5~7歳くらいまでと言え、大人になってからは、扁桃はあってもなくてもかまわない器官に変わると言えるのです。そして、この扁桃が細菌などに感染して炎症を起こすのが扁桃炎です。

扁桃炎の症状

扁桃炎は段階によって症状が変わり、慢性化すると他の病気を併発する恐れがある病気です。

初期段階

①赤く腫れる
②痛みが出る
③飲食時に喉(のど)に違和感を感じる

急性扁桃炎(喉の腫れが進み、喉症状が著しい)

①38℃から40℃の発熱
②食事や唾液(だえき)を飲み込む際に初期段階より痛みが増し、時には扁桃に白い膿(うみ)の塊(かたまり)が付く
③頭痛
④倦怠感
⑤関節痛
⑥寒気
⑦頸部リンパ節腫張
⑧中耳炎を併発する場合も
また、ウイルスが原因の急性扁桃炎では肝臓の一時的な機能障害を起こすこともあります。なお、急性扁桃炎が悪化すると「扁桃周囲炎」という腫れ・痛みがさらにひどくなる病気に移行します。扁桃周囲炎は、急性扁桃炎が治りかけた際に治療をやめてしまうことに起因していますから、治療は医師からOKが出るまで行いましょう。

慢性扁桃炎(扁桃炎を1年に2回以上繰り返す)

①食事や唾液を飲み込む際の痛みは初期段階より増す
②頭痛
③耳の痛み
④喉の乾燥
⑤咽頭異常感
急性扁桃炎と慢性扁桃炎は症状としては大きな差はないのですが、慢性扁桃炎の場合には、合併症の発症に気をつけなければなりません。慢性扁桃炎の合併症として挙げられるのは、関節リウマチ、腎炎など日常生活に支障を来す病気なので十分な注意が必要です。また、慢性扁桃炎は、発症してしまうとお薬での改善は見込めません。普段から栄養バランスのとれた食事をとり、十分な睡眠を確保するなど正しい生活習慣を身につけておくといいでしょう。

扁桃炎の治療

扁桃が腫れたら、できることならすぐに診察を受け、ペニシリン系抗生物質の内服と喉の消毒、対処療法としての鎮痛解熱剤の内服をすることで比較的短期間に症状が改善されます。早めに治療を開始し、水分をたくさん取り身体をゆっくり休め安静を保つことで、扁桃炎の症状は2日くらいでよくなることがほとんどです。ただし、扁桃炎を1年に4~5回もしくはそれ以上繰り返すようになると「習慣性扁桃炎」と診断され、手術してなくてはいけない状況になってしまいますので、注意が必要です。

扁桃炎の予防

扁桃炎の原因は、「風邪」「免疫力の低下」「喉の乾燥」と言われています。
それぞれの予防方法をご紹介します。

「風邪」の予防

①蒸気吸入器で喉の粘膜にある線毛の運動を促進する
②空気清浄機や加湿器をうまく使う(湿度が40%を下回ると風邪を引き起こすウイルスが空気中を漂うと言われます)
③手洗いとうがいをする
④十分な睡眠をとる

免疫力の向上

①バランスのとれた食事をとる
②特にビタミンCを積極的にとる
③適度な運動と十分な睡眠に心がける

喉の保湿

①マスクを着用する
②こまめにうがいをする
③蒸気吸入器を使う
④1日に1,500mlの水を少しずつ何回にも分けて飲む
⑤加湿器などを使って部屋の湿度を40%~70%で維持する
⑥たばこを控える
⑦鼻呼吸を心がける

以上のポイントを習慣にすることです。扁桃炎は急性でも慢性でもなかなか厄介で体力を使う病気です。特に慢性化してしまうと、蓄膿症や内臓の病気を発症するリスクも高くなります。風邪の予防、免疫力の向上、喉の保湿を習慣化していれば扁桃炎はもちろんのこと、他の病気も寄せ付けないことに繋がります。できることひとつからでも実践することが大切です。