私たち人間は、1日におおよそ8時間眠るサイクルで生活しています。つまり人生の約1/3は眠っていることになります。睡眠は昼間の活動で疲れた体と脳を休息させるための、とても重要な時間帯。睡眠が十分にとれない状態が続くと、「眠い」「疲れた」というだけでなく、さまざまな悪影響を及ぼすようになります。とくに睡眠中に呼吸が止まるような事態が繰り返されると、体に取り込まれる酸素の量が少なくなってさまざまな臓器に障害をもたらす上に、日中に眠くなり活動が低下するなど、社会生活にも影響を及ぼすようになります。また肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症など、いわゆる生活習慣病を合併するケースが多いといわれています。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
眠っているときに無呼吸状態になる病気で、SAS (Sleep Apnea Syndrome) とも呼ばれています。無呼吸状態とは、呼吸が10秒以上止まっていることを指し、この状態が7時間に30回以上、あるいは1時間あたり5回以上あると睡眠時無呼吸症候群(SAS)となります。
2003年2月に山陽新幹線で起こった列車緊急停止事故をご記憶の方も多いでしょう。乗客を乗せた新幹線が、運転士が眠ったまま時速270kmで走りつづけたのです。原因がSASによる居眠りと分かり、社会に大きな衝撃を与えたのでした。
これは、タクシーやトラックの運転手、飛行機や船の操縦士などあらゆる交通機関にかかわってくる問題です。また、仕事での大事な会議中や学校での授業中など、大事な時間であっても強い眠気に襲われたり、居眠りをしてしまったり、仕事や勉強への意欲が低下して、周囲からは「なまけもの」「だらしない人間」としてとらわれがちです。SASはまさに、社会的な問題となる病気なのです。
睡眠時無呼吸症候群 (SAS) の原因
主な原因には次のようなものがあります。
- 太っていてあごや首に脂肪がついている
- アデノイド増殖症、扁桃肥大などの病気により、鼻の奥や喉が狭くなっている
- 花粉症やアレルギーなどで、鼻が詰まりやすい
- あごが小さい
- アルコールの摂取により舌の筋肉がゆるんで、のどがふさがりやすくなる
SASは太った人に多い病気と思われがちですが、日本人ではやせていてもあごが小さいなどの顔の特徴から、SASにかかる人が多くみられます。太っていないからと関係ないと判断するのは禁物です。
さらに狭心症や肺の病気などにかかっていると、SASを悪化させるといわれています。
睡眠時無呼吸症候群 (SAS) の症状
SASになると、しっかり眠れないことでいろいろな症状が現れるようになります。あなたは次のような症状に心当たりがありませんか?
眠っているとき:
- いびきをかく
- 息が止まる
- 呼吸が乱れる
- 息が苦しくて目が覚める
- 何度も目を覚まし、トイレに行く
日中、起きているとき:
- しばしば居眠りをする
- 記憶力や集中力が低下する
- 性欲がなくなる
- 性格が変化する
- 体を動かすときに息切れがする
診断・検査の流れ
当院では、レンタルの検査機器をご自宅へ配送する方法で簡易型の検査を行っています(検査の申し込みには診察が必要です)。
就寝前に鼻と指にセンサーを装着します。説明書に従って装着するだけなので心配ないです。
- 睡眠中の無呼吸といびきの回数や持続時間
- 体内に酸素がどの程度含まれているか(酸素飽和度)の変化
などを調べます。
治療
ここではCPAP治療について解説します。
CPAP治療
Continuous Positive Airway Pressureの頭文字をとってCPAP(シーパップ)と呼ばれ、CPAPはいまやSASのもっとも重要な治療法となっています。スクリーニング検査でAHI40以上、または確定診断でAHI20以上で保険診療でのCPAP治療が適用となります。
CPAP装置からエアチューブを伝い、鼻に装着したマスクから空気が送り込まれ、閉塞したのどを空気圧で押し広げて気道を確保することで寝ている間の無呼吸を防ぎます。