何らかの植物の花粉が、鼻や喉(のど)、耳、目などの皮膚に接触することによって引き起こされ、発作的なくしゃみ、鼻水、鼻づまり、喉や耳、目のかゆみ――などに一連のアレルギー症状が出るのが花粉症で、アレルギー性鼻炎の1種です。また、その植物の花の咲く時季にのみ鼻炎症状を発症することから、「季節性アレルギー性鼻炎」とも呼ばれます。統計によれば、現在、花粉症の人口は1,000万人以上に上ると言われ、気管支喘息(ぜんそく)、アトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患と並ぶ国民病となっています。アレルギーを引き起こす物質、アレルゲンとして最も有名な花粉は、春にみられるスギ花粉で、「花粉症=スギ」と思われている方もいるようですが、ヒノキ、ブタクサ、ヨモギなど、その他の花粉で起こるアレルギー性鼻炎もあります。
花粉症の原因
原因は、当然ですが、スギ、ヒノキ、ブタクサなどアレルゲンとなる花粉を体内に取り込むことです。また、現代病の1つとも言われているように、年々患者数が増加していることから、食生活や住環境の変化により、アレルギー体質の方自体が増加していることや、大気汚染なども一因であると考えられています。
花粉症の症状
通年性のアレルギー性鼻炎と同様に、くしゃみ、鼻みず、鼻づまりといったアレルギー性鼻炎の3大症状と、それに伴う夜間の睡眠不足、集中力欠如、イライラなどです。また、重症の方では頻繁に慢性副鼻腔炎(蓄のう症)を合併することがあります。
花粉症の治療
花粉症の治療は、まず第1に、マスク、メガネなどで原因となる花粉を体内に取り込まないようにすることです。
ここで注意したいのが、マスクの着け方で、口だけを覆うのではなく、鼻まですっぽりと覆うようにマスクを着用してください。
また、メガネは、花粉症の保護専用のメガネだけではなく、通常のメガネをかけるだけでも、目に入ってくる花粉の量はかけない時の3分の1程度になると言われています。ゴーグルのような専用のメガネに抵抗のある方でも、普通のメガネなら抵抗なく使用できると思いますので、ぜひ、お試しください。また、衣服は、ウールなどのようにの表面に凹凸のある生地ではなく、ツルツルして起伏のない生地の衣服を身につけると花粉の付着を最小限に抑えることができます。そして、不規則な生活リズムや、睡眠不足、過労やストレスはアレルギー症状を悪化させると言われていますので、生活習慣を見直すことも症状の軽減に有効です。とはいえ、実際には、100%花粉症を避けることはできません。症状がなかなか改善されない方やひどい方では、抗アレルギー薬などのお薬の内服、鼻腔に直接噴霧する点鼻薬、点眼薬が必要となる場合があります。用いるお薬は通年性のアレルギー性鼻炎と同じですが、特に、花粉症の場合は、アレルゲンとなる花粉が飛散する前の鼻炎症状が発症しないうちに投薬を開始する「初期療法」が有効です。
花粉症の初期療法
初期療法は、花粉症治療に用いられる第2世代抗ヒスタミン薬をスギなどのアレルゲンとなる花粉の飛散が開始する約2週間前から飲み始める治療法です。例えば、スギ花粉がアレルゲンという方は、1月の下旬くらいから服用を開始すると効果的です。
従来の抗ヒスタミン薬には、副作用として強い眠気と口の渇きなどがありましたが、第2世代の抗ヒスタミン薬は、従来よりも眠気が少なく、より効果的にアレルギー症状を緩和させるよう開発されたお薬です。鼻炎症状が発症してから薬を飲み始めるのに比べて、シーズン中の症状を軽減できることが多く、また最終的には服薬量も減らせる効果が期待できます。例年、内服薬とステロイド点鼻薬を離せなかった患者さんが、初期療法で点鼻薬は使用しなくて済んだということもあります。特に鼻水、くしゃみが強いタイプの患者さんに効果的です。
スギ花粉以外でも、自分がどんな花粉にアレルギーがあるのか、その花粉はいつ頃から飛び始めるのかが分かれば、この予防的治療が可能です。初めて花粉症になった方には行えませんが、毎年一定の時季に必ず花粉症に悩まされるという方には、この初期療法をおすすめします。このほか、当院では、より眠気の少ない漢方薬による治療やレーザー治療も行っていますので、関心のある方はご相談ください。